宮島衣瑛コラム

宮島衣瑛 第7回「Scratchの真価はコミュニティ」

Scratchの真価

Scratchには、自分が作ったものを共有して、そこから振り返り(Reflect)をするためにコミュニティがあります。

Scratchの真価はそこにあって、コミュニティを含めてScratchだとよく言われます。

Scratchのコミュニティで何ができるかというと、お互いの作品にコメントしあったり、フォーラム(掲示板)があって、世界中の人と交流することができます。

Scratchディスカッションフォーラム(英語)

Scratchディスカッションフォーラム(日本語)

Scratchのフォーラムは、ある種のSNSのような使い方がされていて、インターネット上の交流の場となっています。

人が交流するようになると、当然問題もおこってきます。例えば、誹謗中傷のようなものもありますし、Scratchとは関係のない内容が投稿されたりといったこともあります。

Scratchのコミュニティに参加するためには、Scratchのコミュニティガイドラインの内容を遵守する必要があります。

 

Scratchコミュニティのガイドライン

こちらは実際のScratchのコミュニティのガイドラインです。

Scratchを、いろいろな背景や興味を持ったメンバーを受け入れるような、友好的で創造的なコミュニティとして続けていくためには、みんなの助けが必要です。

敬意をしめそう。

プロジェクトを共有したり、コメントを投稿するときは、さまざまな年齢のさまざまな人がそれらを見ることを忘れないでください。

建設的になろう。

他の人のプロジェクトにコメントするときは、そのプロジェクトの気に入った点やこうしたらどうかな?という提案を含めるようにしてください。

共有すること。

Scratchで見つけたプロジェクトやアイデア、画像などすべてのものは、自由にリミックスできます。同様に、あなたが共有したものも、誰でも自由に使うことができます。リミックスするときは、必ずクレジット(元の作者名)を「作品への貢献」として記載してください。

個人情報を公開しないこと。

安全上の理由から、個人情報を公開しないでください。これには、苗字や電話番号、住所、電子メールアドレス、適切に管理されていないチャットのあるWebサイトやSNSへのリンクなどが含まれます。

誠実であること。

他のScratcherになりすましたり、良くないウワサを流したり、その他の方法でScratchコミュニティにいたずらするのはやめましょう。

サイトを心地よい場所にすること。

プロジェクトやコメントの中に、下品、失礼、暴力的などの理由で不適切だと思われるものを見つけた場合は、「報告」をクリックしてご連絡ください。

Scratchは、何歳であっても、どんな人種、民族であっても、能力に違いがあっても、どんな宗教を信じていても、どんな性的指向、性同一性を持っていても、すべての人々を歓迎します。

https://scratch.mit.edu/community_guidelines

 

Scratchのガイドラインには、「敬意をしめそう。」「建設的になろう。」「共有すること。」「個人情報を公開しないこと。」「誠実であること。」「サイトを心地よい場所にすること。」という6つの項目があり、まずは、このガイドラインを認識するということが重要です。

MYLABでも折に触れてこのガイドラインをお伝えしています。

Scratchのガイドラインに書かれていることは、日常生活においても重要なもの

Scratchのガイドラインに書かれていることは、Scratchを利用する上でのガイドラインですが、インターネットを使うとき全般や、一般生活をする上でも重要なことでもあります。

ガイドラインの項目の中でも、「共有すること。」という項目は面白いものです。

Scratchには、リミックスという機能があって、誰かが作った作品をコピーして、自分が修正を加えて公開することができます。Scratchでは、リミックスの文化があって、ぜひどんどんリミックスしてくださいということがガイドラインに書かれています。

加えて、著作権のこともきちんと扱われていて、リミックスするときには、必ず作品への貢献としてクレジットしましょうということも書かれています。

こういう考え方は、IT関連のコミュニテイ固有の価値観(=オープンソース的な考え方)だと思います。もともと、産業構造としてIT業界は弱い立場にあったので、他の産業に立ち向かうには、自分たちの利権や知識、得られた知見を自分たちだけで使ってブロックしてしまうのではなくて、共有していかないとうまく行かないということがありました。

逆に言うと、それができたから、IT業界はここまで爆発的な発展をとげることができました。

ガイドラインをなぜ守らないといけないかと考えることが重要

こうしたガイドラインがあることのメリットは、なにか問題が起こったときに立ち戻って考えることができることだと思います

利用者を締め付けるという発想で作られたガイドラインもあります。ガイドラインの役割はそれだけではなくて、判断に迷ったときにたち戻れることができるものという役割もあります。

そういう意味で、Scratchのガイドラインは、すごく優れたものだと思います。

私がワークショップをやるときに、子どもたちがScratchのアカウントを作ったときには、必ずScratchのコミュニティガイドラインに言及して、こうしたものをきちんと守って欲しいと伝えるようにしています。

ただし、大人から必ず守るようにと言われたから守るというのは、子どもからするとピンとこないこともあると思いますが、「なぜ守らないと行けないのか考えてみよう」というプロセスが重要だと思います。

Scratchのガイドラインは、Scratchを使う上でのガイドラインというだけではなく、いろいろなシーンで立ち戻る場所として優れたものだと思います。

ガイドラインに記載されている「敬意をしめそう。」「建設的になろう。」「誠実であること。」「心地よい場所にすること」といったことが重要なのは、インターネットを利用するときだけではなくて、リアルな場においても重要なものです。

こうしたことを理解する子どもたちが増えると、心地の良いコミュニティができると思います。

コミュニティの存続にとって必要な2つのもの

私はよく、コミュニティの存続にとって必要なのは、「相互リスペクト」「コミットメント」という話をします。

特に重要なのは「相互リスペクト」の部分で、リスペクトしあえない人が多いと、そのコミュニティに参加する意義がなくなってしまいます。

私の会社や、私が長く関わっているようなコミュニティでは、そこに相互リスペクトがあります。

私自身が代表をやっていたとしても、そこについてきてくれる個々人に対して、「こういういいところがあるな」「こういうところが面白いな」と思って、リスペクトしています。

お互いに、こういうリスペクトの気持ちがあるということが非常に重要だと思います。

「コミットメント」もまた重要です。どんなにすごい人でも、名前だけではコミュニティが良くなっていかないので、参加している限りは、自分ができる程度で良いので協力するということが重要です。

「相互リスペクト」と「コミットメント」は、大人だから、子どもだから、というのは関係ないと思います。年上の方で「こういうすごいところがあるな」と思うこともありますが、たとえ相手が子どもであっても、「この子には、こういう面白いところがあるな」と思うこともあります。

逆に、私自身もそういうふうに思ってもらえるようにならなければいけないと思います。

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