宮島衣瑛コラム

宮島衣瑛 第6回「FIRST® LEGO® Leagueのすすめ」

私にとってのFLL

私がはじめてFIRST® LEGO® League(以下、「FLL」)というロボット競技会に参加したのは、10年以上前、小学4年生のときでした。レゴの教室に通っていた時に、FLLに出場することが一つのアクティビティになっていました。

教室のレッスンとして取り組んでいたので、ロボット競技もプレゼンテーションの活動も両方やりましたが、私は主にプレゼンテーションの活動を中心に行っていました。また、ロボット競技では、ハードウェアよりもソフトウェア、プログラミングを作る活動を行っていました。

「パソコンを使ってみたい!」「PowerPointを使ってみたい!」というのが、FLLの活動に参加するモチベーションになっていました。

FIRST® LEGO® Leagueとは?
FIRST® LEGO® Leagueは青少年を対象としたロボット競技会で、世界110カ国、約67,000チームが参加する世界最大級の競技会。アメリカで教育活動を行っているNPO法人「FIRST」とレゴ社によって1998年に設立され、日本では2004年から開催されている。競技種目としては、ロボットでミッションのクリアに挑戦する「ロボットゲーム」に加え、「イノベーションプロジェクト」 「ロボットデザイン」 「コアバリュー」の3つのプレゼンテーションがある。「イノベーションプロジェクト」では、世界に存在する課題の解決策を調査・提案する探求的なプロジェクト活動の総合点で競うのが特徴。
詳細はFIRST Japanのサイトを参照:https://firstjapan.jp/

取り組みの自由さがFIRST® LEGO® Leagueの魅力

当時を振り返ってみると、プログラムを書いたり、ロボットを作るというよりは、チームをまとめるといったことのほうが得意な子どもでした。

みんながやっていることをみながら、チームの強みを引き出したり、プレゼンしたりといったことをやっていました。

そういう意味では、当時の活動が今の自分に生きている気がしますし、いま自分が行っている仕事は、当時やっていたこととあまり変わっていないのかもしれません。

FLLはすばらしい活動ですが、その要因の一つに、アプローチの多様さがあります。

たとえば、ロボット競技を考えた時に、どのミッションに取り組むのも自由です。また、世界に存在する課題の解決策を調査・提案する「イノベーションプロジェクト」でも、どんな課題に取り組むか、課題に対してどうアプローチするかといった着眼点も自由です。

その中で、自分たちが興味があることをひたすら追求していけるというのが、FLLの良さです。

一方で、自由だからこそ、本気で取り組まないとプロジェクトがうまく行かないという難しさもあります。

子どもたちに社会との接点を提供したい

私が取り組んだときは環境問題がテーマになっていて、温暖化による海面上昇で沈んでしまうツバルの話などがあったのを今でも覚えています。ニュースで聞くよりも、自分で調べたほうが記憶に残ります。

また、こうしたイノベーションプロジェクトのテーマは社会問題と直結していて、子どもたちに社会との接点を提供することが可能です。

さらに、自分たちで特定した課題の解決法を提案しますが、技術的な解決案だけでなく、多様な視点から問題解決の方法を考えることができます。そういう意味で、ロボット競技だけに主眼をおいて、技術一辺倒というわけでないというのも、FLLの良さだと思います。

STEM(Science、Technology、Engineering、Mathmatics)は重要ですが、その枠組みだけでは不十分だと考えています。最近では、STEAMとして、アート(Art)の視点を加えて語られることも増えました。

MYLABでは、これからFLLにチャレンジしていきますが、STEAMに加えて、社会(Society)という視点ももった活動にしていきたいと考えています。

FLLを通して子どもたちに身につく力とは?

FLLへの参加を通して、正解のないものに答えを見出したり、問題を発見する力が、子どもたちに養われていくと思います。学校で勉強しているときには経験できない、「自分で問題をつくっていいんだ!」という経験をすることができます。

また、「人から提示されたものだけが問題なのではなく、自分たちがこれはこう変えたほうがいいよね!」と思ったことそのものが問題だと気づくことができます。加えて、そうした状況を変えるためにはいろいろなスキルが必要ですし、自分たちの力だけでは実現できないということに気づくこともできます。

FLLでは、専門家の話を聞いたり、その問題に直面している当事者に話を聞くことなどが推奨されていたりします。自分たちで能動的に学んでいくことでしか得られないことがあるはずです。

FLLで取り組む、「ロボット競技」、ロボットのハードウェア・ソフトウェアについてプレゼンテーションする「ロボットデザイン」、自分たちのチームそのものについてプレゼンする「コアバリュー」、探究的な「イノベーションプロジェクト」のすべてを学校で取り組むことは難しいので、MYLABで取り組むことに意味があると考えています。

クリエイティブ・ラーニングとFLL

MYLABは、クリエイティブ・ラーニングという学習理論をベースにした教室ですが、FLLの考え方や理念と非常に近いものがあります。

MYLABでは、「創造的に考え行動する力を育む」ことを大事にしていますが、FLLのロボット競技やプレゼン作成においてやっていることは、まさに創造的な問題解決です。

特に、「イノベーションプロジェクト」では、解決策を考えるだけではなくて、そのソリューションを実際に作ってみるというのは、まさにMYLABが目指す教育のあり方そのものです。

こうした基本姿勢が一緒だからこそ、MYLABの活動としてFLLを取り入れる意味があると考えます。

MYLABの基礎的なロボットのコースでは、センサーやモーターを使ってミッションのクリアに取り組んで行きます。FLLでは、そうしたところで学んだすべてを使って取り組む必要があります。

そう考えると、FLLは総合格闘技とも言えますし、応用的な活動だからこそ、面白いのだと思います。

MYLABではFLLへの出場をゴールとするのではなく、取り組んだ課題やテーマに興味があれば、その取り組みを継続できるようにしていきたいと考えています。

 

宮島 衣瑛(みやじまきりえ)
株式会社 Innovation Power 代表取締役社長CEO
学習院大学大学院人文科学研究科教育学専攻博士前期課程

1997年5月生まれ。プログラミング教育を始めとするICT教育全般についてのR&D(研究開発)を行っている株式会社 Innovation Power のCEO。2017年4月より柏市教育委員会とプログラミング教育に関するプロジェクトをスタート。市内すべての小学校で実施するプログラミング学習のカリキュラム作成やフォローアップを担当。2017年11月より一般社団法人CoderDojo Japan理事。大学院ではコンピュータを基盤とした教育について研究している。

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