コラム

宮島衣瑛 第3回「好きをみがいてワクワクと出会う」

MYLABのカリキュラム監修をしている、株式会社 Innovation Power の宮島衣瑛です。今回は、私のこれまでの活動を振り返りながら、これからの子どもたちの学びのあり方について考えていきたいと思います。

私は、2013年に CoderDojo Kashiwa を仲間と一緒に作ったのを皮切りに、2014年にはTEDxKids@Chiyoda に登壇したり、作ったアプリがNHK主催のイベントで使われたりしていました。高校2年生の冬に株式会社 Innovation Power を立ち上げてからは、柏市のプログラミング教育事業に携わったり、総務省の地域ICTクラブ実証事業に採択されたり、様々な企業さんの教育事業のお手伝いをしたりしながら、一般社団法人 CoderDojo Japan の理事を務めていたり、最近では母校の小学校の学校協議委員や図書館協議委員などを務めています。

 振り返ってみると、3~4歳くらいから、新浦安にあるレゴの教室に通っていたことがすべての根底にあるような気がします。そこでレゴブロックだったり、小学生の後半からはコンピュータを使うようになりました。

また、普通の家であれば、仮面ライダーのおもちゃや、戦隊もののおもちゃといったものもあると思いますが、私の家にはレゴくらいしかおもちゃがありませんでした。

今思えば、そういう環境で創造力のもととなるようなものが育まれたのかなと思いますが、当時は、それが好きで、楽しいからやっていただけで、将来どうなるかなどは全く考えていませんでした。

転機となった中学生の時のMITカンファレンス

転機になったのは、中学3年生のときにMIT(マサチューセッツ工科大学)で開かれたScratchのカンファレンスに行ったことです。当時通っていた教室に声がかかって、一緒に行きませんかという話になりました。アメリカに渡って、MITの様子を見て、ここでスクラッチが作られてるのかと感慨深く思いました。

私は中高一貫の学校に通っていたので高校受験はありませんでしたが、中学3年生で部活が終わってしまい、時間ができました。その時に、自分でプログラミングやるのもいいなと思ったのですが、私の親が大学で教員をやっていたということもあり、私自身もずっと人に教えることが好きだったので、「プログラミング」と「人に教えること」が同時にできるような、そんな活動をやってみようかなと思いました。

高校生になって、CoderDojo Kashiwa をはじめてからは、現在まであっという間でした。今思えば、CoderDojo での活動にはクリエイティブ・ラーニングの「4つのP」がそろっていて、自分が CoderDojo を運営するというプロジェクトがあって、そこには並々ならぬ情熱を持っていて、遊ぶように仕事をしていましたし、それを分かち合える仲間もたくさんいました。このように、「4つのP」の要素がそろっていたからこそ、ここまでやってこれたのだと思います。

4つのPで、一番むずかしいのは情熱(Passion)の部分だと思います。高校生の時からこういう活動をやってきたので、色々と取材を受ける機会がありました。「なぜやっているの?」とか、「モチベーションの源泉は何ですか?」とよく聞かれましたが、自分でもよくわかりませんでした。

正直に言うと、いまもよく分かっていないのです。なぜやっているのかを言葉にするのはとても難しいです(笑)。

「創ることを楽しむ」

一時期、CoderDojo Kashiwa が一番大きな道場でであればいいと考えていた時期がありました。しかし今では、そういう考え方も変わっています。また、会社に関しても、若手起業家として「上場しよう!」と思った方が良いのかもしれませんが、私にはそういう意志はまったくありません。

ただ、これまでやってきたことを振り返って共通していると言えるのは、仕事をやっているその時間が非常に楽しかったということです。自分自身の仕事が創造性に溢れていたからか、仕事をしている時は楽しさから生まれてくるものに一番触れていられる瞬間だったのだと思いますし、逆に仕事を通して楽しさを見出すことができたのだと思います。

「楽しい」のベクトルはいろいろあって、仕事の楽しさもあれば、友だちとわいわいする楽しさもあります。でもやはり、仕事の楽しさにの根本にあるのは、「創る」ということなのだと思います。

自分が「新しいもの」を創造していくことができる。そういったワクワクに出会うことができるので、仕事をやり続けることができるのだと思います。つまり自分が創らないと生まれてくることのない「新しいもの」もあるということだと考えています。だからこそ新しい仕事をつくって、自分にしかできない「新しいもの」を生み出すときが一番楽しいと感じています。

こういう活動を続けていたら、周りに競争する人がいなくなっていました。正確に言えば、「勝ち負けを争う相手は」いなくなっていました。競争相手がいないというのは、良いこともあれば悪いこともあるのですが、のびのびとやれるということがあります。

両親も、私がやっていることについて何も言いません。「はやく就職しろよ」とか、「はやく家を出なさい」といったことも言われません。

「好き」をみがいてワクワクと出会う

自分のワクワクに出会うためには、「好き」をみがくことだと思います。そんじょそこらの好きには負けない、大好きを超えるような「好き」をみがくことが大事です。

大人は学生のことを学生として見ます。それは当たり前ですが、中には学生として見るのではなく1人の人間として見る人もいます。そういう人に刺さるものをもっていると、途端に同じステージに立つことができます。良い意味で子どもとして見られないことが大切で、それを認めさせる武器を持つことが重要です。

私は、武器は「好き」からしか生まれないと思っています。私の「好き」は、教育とプログラミングの2つで、真面目に勉強したということもありますが、気がついたら成長していました。

また、大人の人たちがいろいろなチャンスを作ってくれて、自分が大きく成長する機会にも恵まれました。そういう機会に恵まれるのは、大人たちを納得させられるだけの実績とポテンシャルを見せるということが重要です。それは、「好き」をみがくことからしか生まれないと思います。

学校に呼ばれて、中高生に向けてキャリア教育について話すことも多いのですが、私は「プログラミングをやりましょう」とは言わずに、「好きをみがきましょう」という話をします。

プログラミングは、スキル1本勝負というところがあるので、武器としてわかりやすいものです。また、業界としても柔軟なマインドをもっていて、スキルを持っていればリスペクトしてくれるところもあります。

コワーキングスペースで大人とふれ合うことで成長することができた

私は、高校生の時にずっとコワーキングスペースに通っていました。面白い高校生がいるから入れてやってくれと紹介してもらって、無料で使わせてもらっていました。CoderDojoの活動拠点をそこにおかせてもらっていました。

学校から帰ってくるとずっとそこでワイワイやっていたのですが、そこにたくさんの大人がいました。フリーランスの人達がたくさんいたのですが、その環境がとても良かったなと思います。

コワーキングスペースに行き始めた当初、とてもオシャレな環境で、Macをいじっている自分はかっこいいなとおもって、正直その環境にいる自分は調子にのっていた時期がありました(笑)。しかし、ある時、周りの人は仕事をしているけれども、自分には仕事がないということに気づきました。その時、自分は CocerDojo のことを頑張ろうと思って、それをひたすらやり続けました。

CoderDojo の活動がうまくいくと、頑張ることが面白くなりましたし、コワーキングスペースの充実した環境をフルに活用して自分で仕事を生み出していくという感覚を得ることができました。

また、大人たちに相談すれば親身に相談に乗ってくれるけれども、その人たちはメンターではなくて、ただのコワーキングスペースの1ユーザーとして話し合えるというのが、とても良かったと思います。

そういう意味で、私は、最強のアントレプレナーシップ教育は、コワーキングスペースに飛び込ませることだと思っています。

大人と接する機会として、最近の学生には、インターンがあります。しかし、インターンは与えられた仕事をやるだけに留まります。社会経験を得られる機会としては良いと思いますが、高校生が「1人の人間」としてではなく「高校生」というラベルを貼られている間は、その人の成長にはならないと思います。

「アプリ作った」と言ったとしても、周りの大人が「高校生なのにすごいね」という、「高校生だから」という文脈でしか認めてもらえない瞬間があるでしょう。そこを超えるためには、大人の中で揉まれる必要があると思っています。

社会に出る前に、大人と接する機会を経験する

いまから40~50年くらい前には、地域の中にそういう場があって、そういう仕組みが存在していました。青少年と言われる年代の子どもたちが、地元の先輩や少し年上の大人たちと一緒に活動する機会があって、そこでいろいろなことを学びながら大人になっていく環境がありました。

現在はそういう機会が完全に消失してしまっていて、子どもが大人と接する機会が極端に少なくなっています。これが原因で、若者が過度に「子ども化」しているという議論があります。私は、高校生という多感な時期に、大人とばかりつき合っていたので、そういう意味ではまわりの高校生とは少し違っていたのかなと思います。

 大人と接してよかったのは、大人も普通の人間なんだということに気づけたことです。大人も普通に失敗するし、普通に変なことを言ったりする。それを知ることができて、大人であることのハードルが下がったのはとても良かったと思います。

 大学に入学して、先生と話すときにも、全てにおいて先生は自分より優れている人と考えるのではなく、自分は分野によっては先生とも対等に話すことができると思っています。

 また、「自分のスキルでできることがあればやりますよ」というスタンスで行動していると、いろんな人が自分を使ってくれて、それが良いサイクルで回っていくということがあります。

現在は、大学を卒業するまで「教えられる人」として、教えられたことを覚える、言われたとおりにするということが多いですが、大学を卒業すると急に大人として扱われるようになります。かつては、その間に大人と子どもの中間的な時期がありましたが、そうした環境はもうあまり残っていません。

特に日本の場合は、新卒一括採用という伝統的な雇用体系のなかで雇われた入社1年目の社員は研修だけ受けていて、社会人だけれども社会人ではないというような時間が存在していました。しかし、こうしたあり方がだいぶ崩れはじめていて、ジョブ型雇用が進むと、それに対応できる人と対応できない人の差がどんどん大きくなって、今後の青少年の大きな社会問題となっていくと思います。

MYLABでは、大学生のインターン生を「インターン生」としてあつかうのではなく、重要な戦力として仕事をしてもらっていますが、これはとても重要なことだと思います。そういう姿を子どもたちが見られるということも、良い機会になると思います。

宮島 衣瑛(みやじまきりえ)
株式会社 Innovation Power 代表取締役社長CEO
学習院大学大学院人文科学研究科教育学専攻博士前期課程

1997年5月生まれ。プログラミング教育を始めとするICT教育全般についてのR&D(研究開発)を行っている株式会社 Innovation Power のCEO。2017年4月より柏市教育委員会とプログラミング教育に関するプロジェクトをスタート。市内すべての小学校で実施するプログラミング学習のカリキュラム作成やフォローアップを担当。2017年11月より一般社団法人CoderDojo Japan理事。大学院ではコンピュータを基盤とした教育について研究している。